【2026年05月】チャットAIは数学で嘘を言わなくなったのか【1年前と比較】

前ページまでのあらすじ

前ページまでで,1年前との比較検証は
ひと通り終了しました。

無料で公開されているチャットAIたちの数学推論能力が
全体的に高まっていることは確かです。

ただし,正式に採点対象とした5問は,
AIたちの思考を特定の方向に誘導しないように
質問文を整えたものです。

一方で,学習者からの質問文が
いつもそのように整っているとは限りません。

整った質問にいくら正確に答えられても,
学習者から若干まとを外した質問が来た場合に
回答が大きく乱れるようでは,
数学の相談相手としてはやはり危ういと
言わざるをえないでしょう。

ここでは,延長戦として問6を用意し,
AIたちがそういったぜいじゃくせい
見せないかどうかを試してみたいと思います。

問6(問2の亜種)

質問内容

問6

$\rm\triangle ABC\;$の角$\;\rm A\;$の二等分線と辺$\;\rm BC\;$の交点を$\;\rm D\;$とします。
このとき,$\rm BD=CD\;$となるならば,
$\rm\triangle ABC\;$は二等辺三角形であることを,
中学数学の範囲で証明したいと思います。
(角の二等分線と線分の比に関する定理は
 高校範囲なので使用不可です。)
直線$\;\rm BC\;$について点$\;\rm A\;$と対称な点$\;\rm E\;$をとり,
その点をうまく使えないかと考えているのですが,
できそうですか?

入力文:
△ABCの角Aの二等分線と辺BCの交点をDとします。
このとき,BD=CDとなるならば,
△ABCは二等辺三角形であることを,
中学数学の範囲で証明したいと思います。
(角の二等分線と線分の比に関する定理は
 高校範囲なので使用不可です。)
直線BCについて点Aと対称な点Eをとり,
その点をうまく使えないかと考えているのですが,
できそうですか?

この質問は,問2の亜種ですね。

図1ℹ️️

二等辺三角形かどうか分かっていない$\;\rm\triangle ABC\;$において,
$\;\rm\angle\,A\;$の二等分線と辺$\;\rm BC\;$の交点をとってみると,
辺$\;\rm BC\;$の中点になりましたと。

問2では,この$\;\rm\triangle ABC\;$が二等辺三角形であると
言えるかどうかをAIたちに判断させました。

今回の問6では,二等辺三角形であることを証明したいと明言しつつ,
このように解きたいと解法の要望を伝えています。

具体的には,直線$\;\rm BC\;$について点$\;\rm A\;$と対称な点$\;\rm E\,$$\,$を
使いたいという要望です。

図2

質問の意図

問6の要望に従うと,よく知られている他の解法に比べて,
難易度がかなり上がると思われます。

そのような要望にうまく対応できるかを見るために
作成した問いです。

詳しくはサブ記事で

問6に関する説明や各AIからの回答,
および採点結果については,
下記のサブ記事をご覧ください。⚠️⚠️

問6 採点結果

各AIの得点

問6における各AIの得点は
次のようになりました。(※10点満点)

【問6の結果】

参加AI名問6の得点
Gemini-N10点
Gemini-T9.5点
DeepSeek-T5点
MathGPT-N1点
ChatGPT-N0点
ChatGPT-T0点
Copilot-N0点
Copilot-T0点
Perplexity-N0点
Claude-N0点
Grok-N0点
DeepSeek-N0点

【問2の結果】(参考)

参加AI名問2の得点
ChatGPT-T10点
Gemini-N10点
Gemini-T10点
MathGPT-N10点
Claude-N9.5点
DeepSeek-T9.5点
DeepSeek-N7.5点
Perplexity-N3点
ChatGPT-N2点
Copilot-N2点
Copilot-T1.5点
Grok-N1点
  • 問6のもととなった問2の結果を併記しています。

「サービス名-N」は熟考機能オフ,
「サービス名-T」は熟考機能オンです。

より正確な意味については,
当記事の2ページ目をご覧ください。

平均点

問6の平均点は次の通りです。

問6問2
全参加AIの平均点2.13 点6.33 点
高速モデル (-N) の平均点1.38 点5.63 点
熟考モデル (-T) の平均点3.63 点7.75 点

問6 総評・所感

Gemini 以外ほぼ全滅

いやあ,AIはこういうミスリード(誤誘導)
弱いんじゃないかと思ってはいましたけれども。

ここまでボロボロに崩れるとは予想しませんでした。
平たく言って,Gemini 以外ほぼ全滅ですね。

大半のAIは,問6で示された要望に応えようとして
無理な証明手順に入り込み,その途中で
正しくない推論を正しいかのようにごまかしてしまいました。

DeepSeek-T$\;$の中途半端な点数について

DeepSeek-T の問6の得点が中途半端ですね。

DeepSeek-T は,質問で示された点$\;\rm E\;$を
無理やり使って正しく解けたものの,
その解法は明らかに遠回りであるにもかかわらず,
点$\;\rm E\;$をうまく使って解けたかのような口ぶりでした。

決定的な間違いはありませんでしたが,
妥当な解説とは言えないため,
このような点数になっています。

正式参加外のAIについても
回答を採取して採点しましたので,
ご興味のある方は問6のサブ記事にてご確認ください。ℹ️️

問6は,もととなった問2に比べると
はるかに採点基準が厳しいので,
得点の単純比較はできません。

しかし,問2は解けていたAIが
問6ではあえなく間違えたケースが多発したことは,
この採点結果から一目瞭然でしょう。

なぜAIは問6が苦手なのか

よく知られるチャットAIの欠点

数学の質問に限らず,
多くのチャットAIに次の2つの欠点があることは,
広く知られていると思います。

多くのチャットAIが有する欠点

  1. AIは堂々とうそをつく。ℹ️️
  2. AIは対話相手である人間の意見に
    同調しがちである。ℹ️️

本検証では,1年前の記事も含めて,

AIは数学において
分からないことを分からないと言えない

ことを問題視してきました。

この問題点は,上記の (1) と同一視してもよいと思います。

どちらも,不確かなことを確かであるかのように
述べてしまうという意味で共通しているからです。

(2) については,筆者も普段AIを使っていて,
そのような傾向がありそうだと感じてはいました。

ですので,個人的にAIを利用する際も,
なるべくAIに賛同を求めないよう心がけています。

本検証の問1~問5においても,AIに先入観を持たせず,
AIの見解をそのまま引き出せる質問文になるよう
留意しました。

そこで問6

そこで問6の登場です。

AIが先入観なく
実力を出し切れれば解ける問題でも,
無理気味な解法に誘導されたらどうか?

この視点で問2を改造したのが問6です。

先に述べたように,AIは人の意見に同調しがちです。
言い換えれば,人の意見に引きずられがちです。

そうでなくとも,AIはなるべく
質問者の要望に応えようとするものでしょう。

かつ,以前から指摘しているように,
AIは平気で嘘をつきますし,
分からないことを分からないと言えません。

以上を踏まえ,次の仮説が浮上してきました。

筆者が立てた仮説

数学で無理気味な解法に誘導された場合,
AIはそれでも要望に応えようとして正道を外れる。

そこから正しい解法にたどり着くのは
容易ではない。

しかし,質問者の要望に沿う解き方は
分からなかったとは言えないので,
不正な推論をもっともらしく仕立てて
提示してしまうのではないか。

そして結果はご覧の通り。
想像以上の壊滅状態が現出したわけです。

これは意地悪な実験ではない

問6は別に,AIの欠点をあげつらうための
意地悪な実験ではありません。

AIを数学の学習相談相手として活用するなら,
学習者がこの程度に,あるいはこれ以上に
的外れな質問をするケースはいくらでもあるはずです。

学習途上の学生などから数学の質問を受けるAIは,
整った質問に正しく応答できればよいわけではないのです。

問6程度のミスリードに対応できず,
間違った理論・推論をもっともらしく語ってしまうAIは,
数学の相談相手としてはおすすめできません。

ちまたでは,AIは東大入試の数学で
満点を取るまでになったと言われますが,
入試問題は,整った質問の最たるものです。

このAIは高難度の入試問題に対して
完璧に近い応答ができるのだから
数学教育にも当然使える

というのは,根拠のない思い込みであると
言わなければならないでしょう。

無料AIの中では Gemini Pro は別格かも

それでも Gemini はだまされない

それにしても,Gemini の堅牢けんろうには驚かされます。

もともと,この問6は,

こういう質問はAIは苦手のはず。
ほぼ完璧にさえ見える Gemini-T でも,
これなら間違えるのでは?

と考えて作った問いです。

完璧でないAIを完璧であると誤認するのは
非常に危ういことです。

なかなかボロを出さない Gemini-T ですが,
もし完璧でないなら,
完璧でないことを証明して見せておきたいのです。

そういった目的で問6を作り,AIたちに投じてみると,
標的にしていた Gemini は高速モデル Gemini-N も含めて
良い応対ができた一方,
他のAIがほぼ全滅してしまったわけです。

個人的には,期待外れなのか期待以上なのか,
よく分からない結果でした。

Gemini Pro の信頼性は非常に高いと言わざるをえない

Gemini-N は,他の問いで結構間違えているので,
完璧にほど遠いことは確かなのですが,
Gemini-T(= Gemini Pro ) が完璧にほど遠いとは
断言できなくなってきました。

前掲の得点一覧表にある通り,
Gemini-T の問6の結果は9.5点であり,
満点(10点)ではありませんが,
筆者は,目くじらを立てるほどの
ミスではないと考えています。⚠️

各AIには問1~問6以外の問いも多数投じていて,
中には間違えやすくなるようわなを張ったものもありました。

それらの問いに対し,各AIが結構な確率で間違える中,
Gemini Pro だけはほとんど間違えないのです。

当記事執筆時点(2026年 6 月)の現状では,筆者が知る限り,

無料で使えるチャットAIの中では,
数学の質問に対する回答の正確さにおいて,
Gemini Pro は別格である

と考えてよさそうです。

1年前は,Gemini も含めて,
数学教育に使うにはまだまだ早いと即断できましたが,
これだけ高い正確性を見せつけられたからには,
実用に堪えるかどうか迷う水準も通り越して,
実用に堪える水準に達したと考えるべきでしょう。

完全無欠でないことは頭に入れておくべき

ただし,Gemini Pro もやはり完璧ではありません。

Gemini Pro が数学的におかしな論理や見解を
述べたケースも少数ながらありましたし,⚠️
図示・図解は動作や精度が不安定です。

現状の Gemini Pro  を数学教育に活用される際は,
次のような感覚で臨まれると良いかと思います。

Gemini Pro 活用指針(2026年 6 月現在)

  • AIからの回答が
    完全無欠であることを前提としない。
  • 純粋な数学推論の部分に限定すれば,
    非常に高い確率で有用な回答が得られると
    期待してよさそう。
  • AIによる図示・図解については,
    まだ多くを求めない方が良い。ℹ️

Gemini Pro の現状については,
次ページでも軽く触れます。

次ページの内容

当記事のまとめとして,
チャットAIたちの1年分の進化を踏まえ,
数学教育におけるAIとの向き合い方について考えます。

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