【課題学習のテーマ】2つの合同な図形をどのように配置したとき,回転移動1回だけで重ねられるか

前ページのあらすじ

前ページでは,次の問題を提起しました。

長さの等しい2つの線分は,
多くの場合,回転移動1回で重ねられると言えるのか。

平行移動では重ねられず,
かつ回転移動1回で重ねられない配置はあるのか。

あるとしたらどのような配置か。

本ページでは,この問題を解決する糸口について
説明します。

導入2 問題の整理

鍵を握るのは垂直二等分線

ではここで,具体的な2線分の配置を見ながら,
その2線分を回転移動1回で重ねるとしたら,
その回転移動の中心はどこになるのかを考えてみます。

次の図のように,長さの等しい2線分 $\rm AB,\ A’B’$ が
平面上に配置されているとします。

図 2-1

この図の線分 $\rm AB$ に対して
1回だけ回転移動を行って,
線分 $\rm A’B’$ に重ねたいわけです。

その回転の中心を点 $\rm C$ とすると,
点 $\rm A$ を点 $\rm A’$ に,点 $\rm B$ を点 $\rm B’$ に
重ねるのですから,

$\rm CA=CA’$ かつ $\rm CB=CB’$ …… ①

であることが必要条件になります。

図 2-2

つまり,点 $\rm C$ は,
線分 $\rm AA’$ の垂直二等分線上にあり,かつ
線分 $\rm BB’$ の垂直二等分線上にもあることが
必要になるわけです。

図 2-3

その2本の垂直二等分線が平行または同一でないのなら,
それらの交点が1つに定まりますから,
回転の中心 $\rm C$ として可能性があるのは
その交点のみです。

もっとも,それだけではいけません。

垂直二等分線の交点 $\rm C$ を回転の中心とする回転移動によって
線分 $\rm AB$ を線分 $\rm A’B’$ に重ねられると言うためには,

$\rm\angle\,ACA’=\angle\,BCB’$ …… ②

が必要になります。

図 2-4

①と②が揃ってはじめて,2線分 $\rm AB,\ A’B’$ は
1回の回転移動で重ねられると言えるわけです。

垂直二等分線が1点で交わらない場合

上の図の2線分 $\rm AB,\ A’B’$ は,
2線分 $\rm AA’,\ BB’$ にそれぞれ垂直二等分線がひけて,
しかもそれらが平行または同一にならないような
配置になっていました。

そのケースについては,記事内でじっくり検証しますが,
その前に,それ以外のケースをひと通り
見ておきたいと思います。

それ以外のケースとは,

  • 線分 $\rm AA’$ や線分 $\rm BB’$ が存在しないため,
    垂直二等分線がひけない。
  • 線分 $\rm AA’$ と線分 $\rm BB’$ の垂直二等分線が平行になる
  • 線分 $\rm AA’$ と線分 $\rm BB’$ の垂直二等分線が一致する

といったケースが該当します。

細分すると,次のようになります。

  1. 2点 $\rm A,\ A’$,または2点 $\rm B,\ B’$ が一致する。
  2. 2点 $\rm A,\ B’$ が一致し,かつ2点 $\rm B,\ A’$ が一致する。⚠️
  3. 四角形 $\rm ABB’A’$ が平行四辺形(長方形を含む)になる。
  4. 四角形 $\rm ABB’A’$ が等脚台形(長方形は除く)になる。
  5. 四角形 $\rm AB’BA’$ が,
    $\rm AA’\raise{1pt}{\;/\!/\;}BB’$ を満たす等脚台形(長方形を含む)になる。
    ※2線分 $\rm AB,\ A’B’$ が交わった状態。
  6. 異なる4点 $\rm A,\ B,\ A’,\ B’$ が,この順に一直線上にある。
  7. 異なる4点 $\rm A,\ B,\ B’,\ A’$ が,この順に一直線上にある。
  8. 異なる4点 $\rm A,\ A’,\ B,\ B’$ が,この順に一直線上にある。
  9. 異なる4点 $\rm A,\ B’,\ B,\ A’$ が,この順に一直線上にある。

実質的に同じものを除くと,
これで全部と言ってよいでしょう。⚠️

数は多いですが,1つ1つは簡単だと思います。

これらのうち,(a),(b),(d),(e),(g),(i) は回転移動1回,
(c),(f),(h) は平行移動1回で,
線分 $\rm AB$ を線分 $\rm A’B’$ に重ねられるケースとなります。

裏返し不要の位置なら,平行移動1回または回転移動1回で重ねられる?

つまり,仮定の話ですが,仮に,

長さの等しい2線分 $\rm AB,\ A’B’$ は,
2線分$\;\rm AA’,\ BB’\;$にそれぞれ垂直二等分線がひけて,
その2直線の交点が1つに定まるならば,
その交点を中心とする回転移動1回で重ねられる。
(※まだ真偽不明)

と言えるのであれば,次の定理が成り立つことになります。

1回の平行移動または回転移動による2線分の重ね合わせ

平面上にある長さの等しい2つの線分は,
平行移動1回または回転移動1回で,
片方を他方に重ね合わせることができる。⚠️
(※まだ真偽不明)

そして,前ページの考察により,
線分だけでなく,どのような図形についても,
同様のことが成り立つと言えるわけです。

これが正しいとすると,
なかなか面白い結論だと思うのですが,
いかがでしょうか。

ただし,正しいかどうかはまだ分かりません。

正しいと言ってよいのか,それとも例外があるのか,
これから検討していきたいと思います。

次ページの内容

この問題について考えるとしたら,
初等幾何による解決を試みる人が多いでしょう。

次ページでは,まず初等幾何で考えてみて,
残る疑問について説明します。

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