【課題学習のテーマ】正多面体がよく知られている5種類しかないことの代数的な証明

前ページまでのあらすじ

正多面体が5種類しかないことの
代数的な証明について考えています。

正$\;p\;$面体の1つの頂点に正$\;n\;$角形が$\;m\;$枚集まるとしたとき,
次の方程式が得られます。

 $\,2mp+2np-mnp=4m\,$ …… ①

この等式の左辺を$\;p\;$でくくると,

 $\,p(2m+2n-mn)=4m\,$ …… ②

となり,$\,2m+2n-mn$ が正の数であることが分かります。

それを満たす整数の組 $(m,\;n)$ を求めることで,
①を満たす $(m,\;n,\;p)$ も求められると考えられます。

解答

この課題学習のテーマは,次の問題を解くことで
解決に近づける目途めどが立ってきました。

問題

$2m+2n-mn>0$ を満たす
整数$\;m\;$,$n\;$の値の組み合わせ $(m,\;n)$ を
すべて求めなさい。

ただし,$m\geqq 3$,$n\geqq 3$ とする。

$2m+2n-mn>0$ を変形する。

\begin{eqnarray*}
mn-2m-2n&<&0\\
mn-2m-2n+4&<&4\\
(m-2)(n-2)&<&4\ \cdots\ \text{③}
\end{eqnarray*}

$m-2$ と $n-2$ はいずれも整数であり,
$m\geqq 3$,$n\geqq 3$ より,
$m-2\geqq 1$,$n-2\geqq 1$ であるから,
③を満たすには,$(m-2)(n-2)$ は
$\,1\;$ または$\;2\;$または$\;3\;$と等しいことが
必要十分条件となる。

よって,③を満たす $m-2$,$n-2$ の組み合わせは,

\begin{eqnarray*}
(m-2,\ n-2)&=&(1,\;1),\ (1,\;2),\ (1,\;3),\\
&&(2,\;1),\ (3,\;1)
\end{eqnarray*}

の5通りとなる。ℹ️️

従って,求める $m,\ n$ の組み合わせは,
次の5通りである。

\begin{eqnarray*}
(m,\;n)&=&(3,\;3),\ (3,\;4),\ (3,\;5),\\
&&(4,\;3),\ (5,\;3)
\end{eqnarray*}

早くも候補が5通りに!

結論を先に言いますと,この5通りが,
正多面体の5種類の1つ1つに対応します。

筆者は,この段階で5通りにしぼり込めるとは
予想していませんでした。

筆者の予想では,十中八九,
この段階では余計な $(m,\;n)$ も出てきて,
それを1つ1つ検証して妥当なものを残すと
5つになるという流れかと思っていました。

ですので,この時点で5通りしか出てこなかったことには
結構驚きました。

これが偶然なのか必然なのかは筆者には分かりませんが,
ここでもまた,数学のすごみを見せつけられた気がします。

面の数$\;p\;$を求める

以上の検討は,もともとは,次の等式が成り立つような
$(m,\;n,\;p)$ を求めるためのものでした。

 $\,p(2m+2n-mn)=4m\,$ …… ②

$\,m\;$,$n\;$の値の組み合わせは既に分かっていますから,
それを②に代入することで,
$\,m\;$,$n\;$,$p\;$の値の組み合わせを得ることができます。

\begin{eqnarray*}
(m,\;n,\;p)&=&(3,\;3,\;4),\ (3,\;4,\;6),\ (3,\;5,\;12),\\
&&(4,\;3,\;8),\ (5,\;3,\;20)
\end{eqnarray*}

計算は簡単なので省略しましたが,
気になる方はご自身で確認してみてください。

文字の値の組み合わせが意味するところを検証する

さて,$m\;$,$n\;$,$p\;$の意味は,
正$\;p\;$面体で,1つの頂点に正$\;n\;$角形が$\;m\;$枚集まっている
というものでした。

従って,上記の $(m,\ n,\ p)$ は,次のような意味になります。

  • $(m,\;n,\;p)=(3,\;3,\;4)$
    正四面体で,1つの頂点に正三角形が$\;3\;$枚集まっている。
  • $(m,\;n,\;p)=(3,\;4,\;6)$
    正六面体で,1つの頂点に正四角形が$\;3\;$枚集まっている。
  • $(m,\;n,\;p)=(3,\;5,\;12)$
    正十二面体で,1つの頂点に正五角形が$\;3\;$枚集まっている。
  • $(m,\;n,\;p)=(4,\;3,\;8)$
    正八面体で,1つの頂点に正三角形が$\;4\;$枚集まっている。
  • $(m,\;n,\;p)=(5,\;3,\;20)$
    正二十面体で,1つの頂点に正三角形が$\;5\;$枚集まっている。

見事に,実在する5種類の正多面体の性質を言い表しています。

そして,等式②を満たす整数の組み合わせ $(m,\;n,\;p)$
(ただし,$m\geqq 3$,$n\geqq 3$,$p\geqq 1$)は
上の5通りだけであることが証明できていますので,
これで,正多面体が5種類しかないことが証明できたと言って
よいのではないかと思います。

次ページの内容

ここまでで,このテーマに対する答えが得られたわけですが,
途中で出てきた $2mp+2np-mnp=4m$ …… ① という
等式の変形については,
もう1つ有効な方法が見つかりました。

次ページでは,補足として,
その方法を紹介したいと思います。

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