【課題学習のテーマ】正多面体がよく知られている5種類しかないことの代数的な証明

導入 テーマの概要

正多面体の種類

中1数学で学ぶように,
正多面体は5種類しかありません。

正四面体,正六面体(立方体),正八面体,
正十二面体,正二十面体の5種類です。

各多面体の頂点,面,辺の数なども含めて一覧表にすると,
次のようになります。

正四面体正六面体
(立方体)
正八面体正十二面体正二十面体
面の形正三角形正方形正三角形正五角形正三角形
1つの頂点に
集まる面の数
33435
面の数4681220
頂点の数4862012
辺の数612123030

正多面体がこの5種類しかないことについては,
図形的な証明もありますが,
なかなか面白い形で代数的な証明ができた(と思う)ので,
その思考を追体験していただきたいというのがこのテーマです。

本記事では,
「面の形」「1つの頂点に集まる面の数」
「(正多面体全体の)面の数」の組み合わせが,
上記の5通りしかないことを証明します。

その組み合わせが1つに決まれば
正多面体も1つに決まると言えるかは
賛否があるかもしれませんが,
この記事で示すのはそのような証明であると
ご理解ください。

このテーマについて考えるための準備

オイラーの多面体定理

その代数的な証明には,
オイラーの多面体定理を使いました。

オイラーの多面体定理

どのような多面体についても,次の等式が成立する。

$$
(\text{面の数})+(\text{頂点の数})-(\text{辺の数})=2
$$

中学・高校の数学の学習段階で重要な定理ではありませんが,
中1数学の教科書でも軽く触れられることがあるので,
中学生や高校生でも,
この等式に見覚えのある人もいるかも知れません。

この定理に馴染なじみのない方は,
前出の正多面体の一覧表を使って,
この等式が成立することを確かめてみるとよいでしょう。

この課題学習のテーマでは,
この定理が成り立つことを前提にします。

正多面体の頂点や辺の数を計算する問題

中1数学としては,
学習に余裕のある人向けという扱いになるようですが,
次のような問題が出題されることがあります。

例題1
  1. 正十二面体の頂点の数を求めなさい。
  2. 正十二面体の辺の数を求めなさい。

前出の一覧表を丸暗記していれば何も考えずに答えられますが,
丸暗記している人などごく少数でしょうし,
覚えていなくても計算できるという問題です。

計算のコツとしては,
正十二面体を組み立てる前の正五角形12枚
思い浮かべることでしょう。ℹ️️

そして,それを組み立てて正十二面体を作るとき,
正五角形の頂点がいくつ集まって
正十二面体の頂点1つができるかを考えます。ℹ️️

前出の表にもあるように,
正十二面体は,1つの頂点に正五角形が3つ集まります。ℹ️️

つまり,正五角形の頂点3つが集まって
正十二面体の頂点1つができるわけです。

正五角形がバラバラの12枚であれば,
頂点の数は全部で $5×12=60$ 個ですが,
それらが3つずつ集まるので,
正十二面体の頂点の数は $60\div 3=20$ 個となります。

辺についても同じように考えます。

正五角形がバラバラの12枚であれば,
辺の数は全部で $5×12=60$ 本ですが,
それらが2本ずつ集まって正十二面体の辺1本になるので,
正十二面体の辺の数は $60\div 2=30$ 本となります。

文字の値が整数であることが前提の方程式

高校数学Aの,整数の性質に関する単元で,
次のような問題が出題されることがあります。

例題2

$x$,$y$ が整数であるとき,次の方程式を解きなさい。

$$
xy-5x+3y-9=0
$$

与式を次のように変形する。

\begin{eqnarray*}
xy-5x+3y-15&=&-6\\[0.4em]
(x+3)(y-5)&=&-6
\end{eqnarray*}

この等式を満たす$\;x\;$と$\;y\;$の値を
実数全体から探すなら,
この式変形はあまり意味がありません。

$x+3$ と $y-5$ はたがいに無関係に
実数全体を動きうる数ということになるので,
その両者の積が定数になると言われても,
$\;x\;$と$\;y\;$の値を特定または限定するには
弱すぎる情報です。
(積が$\;0\;$になるならともかく)

しかし,$\;x\;$と$\;y\;$が整数であれば,
それらの値の組み合わせを,
かなりの程度限定できます。

この強引な因数分解は,
$\;x\;$と$\;y\;$が整数であるという前提があるからこそ
意味をなす式変形です。

この等式を満たす整数 $x+3,\;y-5$ の組み合わせは次の通り。

\begin{align*}
(x+3, y-5)=&\,(-1,\;6), \ (-2,\;3),\ (-3,\;2),\ (-6,\;1),\\
&\,(1,\;-6),\ (2,\;-3),\ (3,\;-2),\ (6,\;-1)
\end{align*}

よって,この等式を満たす整数$\;x\;,\;y\;$の組み合わせは次の通り。

\begin{align*}
(x,\;y)=&\,(-4,\;11),\ (-5,\;8),\ (-6,\;7),\ (-9,\;6),\\
&\,(-2,\;-1),\ (-1,\;2),\ (0,\;3),\ (3,\;4)
\end{align*}

これだけあれば,正多面体が5種類しかないことが証明できる

上記のことが理解できていれば,
正多面体が5種類しかないことを,
方程式を使って証明することができます。

腕に覚えのある人は,
ぜひこの時点で証明に挑戦してみてほしいと思います。ℹ️️

次ページの内容

この問題に対する最低限のヒントを示します。

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