三角形の合同条件は,三角形の決定条件とも言われる
中2数学で学ぶ三角形の合同条件は,
次の通りです。
2つの三角形が,次の条件のいずれかを満たすとき,
それらの三角形は合同である。
- 3組の辺がそれぞれ等しい。
- 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。
- 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。
これはすなわち,
1つの三角形の辺の長さや角の大きさを適切に決めると,
三角形の形が1つに決まるということでもあります。
正確には,次のようになります。
1つの三角形について,
次の条件のいずれかを満たすとき,
その三角形の他の辺の長さや角の大きさも,
それぞれ1つに決まる。
- 3つの辺の長さが決まる。
- 2つの辺の長さとその間の角の大きさが決まる。
- 1つの辺の長さとその両端の角の大きさが決まる。
形が1つに決まるからこそ,
決定条件を満たすような三角形は,
誰が作図しても同じ形になるわけです。
ここに述べた,三角形の合同条件と決定条件は,
本質的には同じことです。
三角形の形がどのように決まるかは,中学数学では示されない
三角形の決定条件を満たす三角形の形は1つに決まる。
そのことは,中学数学の教科書では明示されないにしても,
中学生でも知っていると考えてよいでしょう。
しかし,最初に長さや大きさが指定されなかった辺や角が
どのように決まるかについては,
中学数学では全く触れられません。
例えば,3辺の長さが $4,\ 5,\ 6$ と決まっている三角形は,
形が1つに決まります。
つまり,その三角形の3つの角の大きさも全て決まります。
しかし,それらの角がどのような大きさになるのかは,
中学数学では扱われません。
角の大きさは決まるのに,
どのような大きさに決まるのかは分からないまま。
それは,数学としては,
何とかして解き明かしたいことであるはずです。
しかし,中学数学では手に余るので,
指を咥えて見ているしかなかったわけです。
三角比を使うと,一応の答えが得られる
高校数学ではどうかといいますと,
高校数学Ⅰで学ぶ「三角比」の公式や定理を使うことで,
その疑問に一応の答えを出すことができます。
「一応」と言ったのは,
角の大きさが度数法で(「$67^\circ$」などと)表せるわけではなく,
「その角の三角比はこのような値になる」という形で
示されるためです。
例えば,$\rm\triangle ABC$ について,
$\rm AB=4,\ BC=5,\ CA=6$ であるとき,
$\cos A=\dfrac{9}{16}$ となります。
$\rm\angle\,A$ は,$\cos A=\dfrac{9}{16}$ となるような大きさの角だという
答えが得られるわけです。
このような,間接的な答えではありますが,
中学数学では手も足も出なかった疑問ですから,
これでも大きな進歩と言えるでしょう。
考えるポイント
そこで,三角形の決定条件のそれぞれに対し,
三角比の公式や定理を使って,
残りの辺の長さや角の大きさを求める手順を
整理してほしいというのが,このテーマの課題です。
課題学習や課題研究のテーマとしては
物足りないと思う人も多いでしょうが,
このテーマについて頭の整理をしておくことは有益だと思うので,
多くの学習者に考えてほしいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。