【自由研究のテーマ】合同な図形を移動して重ね合わせるときの手順を短くする

このテーマで考えること

中1数学で,平面上の図形の移動について学びます。

図形の移動には,3種類ありましたね。
「平行移動」,「回転移動」,「対称移動」の3種類です。

そして,中1数学の教科書には,
次のようなことが書かれていることがあります。

平行移動,回転移動,対称移動をくり返すと,
図形はどのような位置にでも移動することができる。

まあ,何十回でも移動をくり返してよいのであれば,
どのような位置にでも移動できそうな気はしますよね。

そもそも,
「このような位置に移動するなら,
 何十回も移動をくり返さないといけない」
なんてことがあるのでしょうか。

そこで考えたくなるのが,次の問題です。

平面上で平行移動,回転移動,対称移動をくり返して
図形を移動する場合,
どのような位置への移動であっても,

合計  回以内の移動で必ず実現できる

のようなことが言えるのか。

これが,この記事のテーマです。

ヒント

用語の準備

ここでは,くり返し出てくる場面を簡潔かんけつに説明するために,

この記事では,このように言い表した場合,
このような意味と考えてください

という,この記事独自の用語(言い回し)の準備をします。

このような準備をする理由

この記事を書いていると,
似たような説明を何度もくり返す必要が出てきました。

例えば,この記事では,

平面上に置かれた2つの合同な図形のうち
片方を移動して,
もう片方にぴったり重ね合わせる

という場面が何度もくり返し出てきますが,
そのたびにこの文言もんごんを書いていると,
説明が無駄むだに長くなってしまいます。

この記事では,平面上に配置された
合同な図形の話しかしないので,

2つの図形を移動して重ね合わせる

のように短く言い表しても,かいまねくことはないでしょう。

ただ,この表現をいきなり使ったのでは,
書き手の想定する場面が
読み手に正しく伝わらないおそれがあるので,
前もって断っておくのが望ましいということです。

ここで紹介する用語は,
この記事でしか通用しない用語であることに
注意してください。

このテーマについて研究してレポートを提出する場合,
ここにげる用語を使うのであれば,
そのレポート内にこれらの用語の定義(意味)を
明記する必要があります。

2つの図形

この記事では,合同でない図形を扱うことはありませんので,
2つの図形」と言えば,
平面上に置かれた2つの合同な図形を意味するものとします。

(図形を)重ねる,重ね合わせる

普通の日本語では,
例えば2枚の紙を「重ねる」と言い表す場合,
それはぴったり重なり合った状態を指すとは限りません。

しかし,この記事では,
2つの図形⚠️を「重ねる」または重ね合わせる」と言い表した場合,
それは,平面上に置かれた
2つの(合同な)図形のうち片方を移動して,
もう片方の図形にぴったり重ね合わせること
意味するものとします。

裏返しの位置,裏返し不要の位置

2つの図形を平面上に配置するとき,
その位置関係は,大きく2通りに分けられます。

その2通りのちがいは,
2つの図形を重ね合わせるとき,
対称移動が必要になるかどうかです。

例えば,線対称でない図形があって,
それと合同な形をした紙が2枚あるとしましょう。

その2枚をぴったり重ね合わせて机の上に置き,
そのうち1枚を裏返して,
机の上の別の場所に置いた状態を想像してください。

この場合,2つの図形の片方を移動して
もう片方に重ね合わせるとき,
どうしても対称移動が必要になりますね。

このような位置関係を,この記事では,
裏返しの位置(にある)と言い表すことにします。

図:裏返しの位置にある2つの図形(対称移動が必要)

また,そうではなく,
平行移動と回転移動をくり返せば重ねられる位置関係を,
裏返し不要の位置(にある)と言い表すことにします。

図:裏返し不要の位置にある2つの図形(対称移動が不要)

異なる種類の移動による代用

平面上で,2つの図形が同じ向きに置かれているとき,
それらは平行移動1回で重ねられます。
(下の図で $\rm P\;$→$\;\rm Q\;$)

その移動は,対称移動2回で実現することもできます。
(下の図で $\rm P\;$→$\;\rm R\;$→$\;\rm Q\;$)

正確な手順の説明については,研究の一部として
各自で考えていただければと思いますが,ℹ️️
ともかく,どのような平行移動であっても,
わりに対称移動を2回行うことで,
同じ移動が実現できるわけです。

このことを,この記事では,
「1回の平行移動は,2回の対称移動で代用だいようできる」と
言い表すことにします。

同時に考えたいこと

このテーマについて考えるときは,
次に挙げる問題についても同時に考えるとよいでしょう。

移動の代用について

  • 1回の平行移動は,何回の回転移動で代用できるか。
  • 1回の平行移動は,何回の対称移動で代用できるか。
  • 1回の回転移動は,何回の対称移動で代用できるか。

もちろん,「代用できない」という答えもあるかもしれません。

ある回数で代用できると考えるならその手順を,
また,代用できないと考えるならその理由を,
自分の言葉で説明してみましょう。

1つの種類の移動(のくり返し)による重ね合わせについて

  • 裏返し不要の位置にある2つの図形は,
    回転移動1回で必ず重ねられると言えるか。⚠️
    もし無理なら,回転移動を何回行えば
    必ず重ねられると言えるか。

    高校数学Cの「複素数平面」を知っている人へ
    筆者が試してみたところ,
    高校数学Cで学ぶ「複素数平面」によるアプローチも
    できそうでした。ℹ️️

    関連記事があるので,興味がある人はのぞいてみてください。
    (ただし,難易度はかなり高いと思います。)

  • 裏返しの位置にある2つの図形は,
    対称移動1回で必ず重ねられると言えるか。
    もし無理なら,対称移動を何回行えば
    必ず重ねられると言えるか。
  • 裏返し不要の位置にある2つの図形は,
    対称移動2回で必ず重ねられると言えるか。
    もし無理なら,対称移動を何回行えば
    必ず重ねられると言えるか。

異なる種類の移動の組み合わせによる重ね合わせについて

  • 裏返し不要の位置にある2つの図形は,
    平行移動と回転移動1回ずつで
    必ず重ねられると言えるか。
    それは,どちらの移動を先にしても可能か。
  • 裏返しの位置にある2つの図形は,
    平行移動と対称移動1回ずつで
    必ず重ねられると言えるか。
    それは,どちらの移動を先にしても可能か。
  • 裏返しの位置にある2つの図形は,
    回転移動と対称移動1回ずつで
    必ず重ねられると言えるか。
    それは,どちらの移動を先にしても可能か。

問題や結論の形は,まだまだ色々ある

ここまで,考えてもらいたい問題をいくつかげましたが,
これらはあくまで例です。

問題の形や,その問題を解き明かした結論の形は,
他にも色々考えられます。

上に挙げられている問題の形には当てはまらないけれども,
このようなことが言えるのではないか

と思えることがあったら,
ぜひそれについても考えてみてください。

注意点

移動する図形は,三角形だけで十分

本当は,さまざまな形の図形の移動を
想定するのが正しいのですが,
このテーマでは,三角形だけで十分です。

理由を簡単に説明しておきます。

2つの合同な図形には,小学算数で学んだように,
対応する点」がたくさんあります。ℹ️️

両方の図形の外周や内部に,
対応する点を3個ずつとって三角形を作れば,
当然ながら,その2つの三角形は合同になります。

そして,もとの2つの図形を重ねることと,
その中に作った2つの三角形を重ねることは,
同じ移動で実現できるようになります。

したがって,どんな図形の移動も,
三角形の移動に置きかえて考えられるので,
最初から三角形の移動だけを
想定すればよいということです。

全ての問題を解決する必要はない

上で見たように,このテーマは,
考え出すと考えが広がって止まらなくなるほどに
深い奥行きを持っています。

しかし,中学生または高校生の自由研究としては,
上に挙げた問題を全部解決する必要はありません。

全部解決できた人も,
レポートに全部書く必要はありません。

面白いと感じた部分や,
レポートに書く価値が高い
(読む人にとって意味がある)と思える部分を
重点的に書くとよいと思います。

最善の結論でなくてもよい

また,これ以上良い結論は考えられないというところまで
がんる必要もありません。

もちろん,できるだけ良い結論をようとするのは
良いことですが,そのために無理をする必要は
ないということです。

例えば,

裏返し不要の位置にある2つの図形は,
必ず回転移動2回で重ねられる

ということがら(命題めいだい)が正しいとして,
自由研究で得られた結論が,

裏返し不要の位置にある2つの図形は,
必ず回転移動3回で重ねられる

というものだったとしたら,
この自由研究の結論には改善の余地よちがあり,
最善の結論(最も良い結論)ではないことになります。

しかし,最善の結論でなくても構いません。

レポートには,3回で重ねられることを堂々どうどうと主張して,
その手順を分かりやすく説明すればOKです。

そして,もしも「2回でも重ねられるかも」と感じていて,
レポートでそのことにれたい場合は,
自由研究の感想などに,
今後の課題として書いておくとよいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。

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