完全暗記をめぐる論争
中2数学で,三角形の合同条件を学びますね。
教科書では,次のような文で紹介されているはずです。
2つの三角形は,次のいずれかが成り立つとき,
合同である。
- 3組の辺がそれぞれ等しい。
- 2組の辺と,その間の角がそれぞれ等しい。
- 1組の辺と,その両端の角がそれぞれ等しい。
教科書にある文言を正確に覚えるべきかどうかは, 先生の間でも意見が分かれる
さて,この三角形の合同条件ですが,教科書にある文言の通りに,
一字一句正確に覚えないといけないものなのでしょうか。
その点については,実は,先生の間で
意見が分かれているようなのです。
生徒に対して1字たりとも間違えずに覚えるよう指導し,
定期試験では正確に書かないと減点すると言う先生もいれば,
文言が完全に同じでなくても,
意味が同じであれば問題ないと言う先生もいるのです。
これでは学習者が迷ってしまいますね。
そこで,この件について筆者の意見を
示しておきたいと思います。
指導者側と学習者側で考え方が異なる
指導者側は,同じ意味の表現なら認めるのが妥当
まず指導者側の考え方としては,
少なくともテストの採点では,
教科書に載っているのと同じ意味にしか読めない表現は,
OKとするのが適切だと思います。
そのような表現は,当然,
数学的にも間違っていないはずですから。
中学生や高校生がテストで次のような表現を使った場合,
私が採点者なら,減点対象にすることはないでしょう。
- 2組の辺の長さとその間にある角の大きさがそれぞれ等しい。
- 2組の角とその間の辺がそれぞれ等しい。
学習者側は,一字一句正確に覚えるつもりでいた方が良い
しかし,だからといって,学習者が
「その場で考えた表現を使えばよい」と考えるのは
少々危うい気がします。
教科書にある表現と同じ意味の表現を考えるのが,
それほど簡単ではないと思われるからです。
よくある間違い
前述の通り,三角形の合同条件には,
「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」
というものがあります。
これを,「2組の辺と1組の角がそれぞれ等しい」と
言い換えてしまう間違いは,よくありそうな気がします。
なぜこの表現ではまずいのか,分かりますか。
次の図をご覧ください。

教科書でもよく取り上げられる例です。
この図は,鋭角三角形 $\rm ABC$ の辺 $\rm BC$ 上に,
$\rm AD=AC$ となるような点 $\rm D$ をとったというものです。
このとき,$\rm\triangle ABC$ と $\rm\triangle ABD$ について,
$\rm AB=AB$(共通)
$\rm AC=AD$
$\rm\angle\,ABC=\angle\,ABD$(共通)
であるので,$\rm\triangle ABC$ と $\rm\triangle ABD$ は,
2組の辺と1組の角がそれぞれ等しいと言えます。
しかし,$\rm\triangle ABC$ と $\rm\triangle ABD$ は明らかに
合同ではないですね。
このように,教科書通りでない表現を自分で考えると,
不正確な表現になる危険性があります。
ケアレスミスの原因にもなる
そうでなくとも,覚えていればすぐに書けることを
自分の頭で考える場合,
余分に思考力を使ってしまいます。
それによって,問題の解き方を考えたり,
計算を間違えないように注意したりするのに
使いたい思考力が削られて,
他のところでケアレスミス が起きることがあります。
そのため,学習者としては,
よく使う決まり文句は教科書通りに覚えてしまうのが得策だと
考えられるのです。
まとめ:よく使う決まり文句は覚えてしまった方が良い
結論としては,
三角形の合同条件や相似条件のような決まり文句は,
一字一句正確に覚えるつもりでいた方が良いと思います。
理由は次の通りです。
- 状況を正しく言い表せる表現を考えるのが,
中学生や高校生にとって簡単ではない。 - 正しい表現を考えるのに気を取られていると,
別のところでミスをしやすくなる。
その上で,試験中に正確に思い出せなくなったら
考えて書くという方針でよいのではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。