この記事では,三角関数の「半角の公式($\sin,\ \cos$)」を解剖し,
覚え方や思い出し方などについて考えていきます。
「半角の公式($\,\sin,\;\cos\,$)」の概要
$\sin^2\dfrac{\alpha}{2}=\dfrac{1-\cos\alpha}{2}$ …… ①
$\cos^2\dfrac{\alpha}{2}=\dfrac{1+\cos\alpha}{2}$ …… ②
公式の意味・使い道
$\alpha$ の三角関数値($\cos\alpha$)をもとに,
$\dfrac{\alpha}{2}$ の三角関数値 $\left(\sin \dfrac{\alpha}{2}\right.\ $と$\ \left.\cos\dfrac{\alpha}{2}\right)$ を求めるための公式です。
それが $0$ でない限り,三角関数値そのものは,
プラス値かマイナス値の $2$ 通りの可能性が残ります。
学習事項としての評定
総合評価
有用性
学習への影響
記憶補強の難しさ
丸暗記の必要性
分析詳細
有用性 文系1 理系2
正直言って,微妙な公式
$\cos\alpha$ の値から $\dfrac{\alpha}{2}$ の三角関数値を求めたい場面は,
たまにはあるかと思います。
ただ,求められるのは2乗の値であって,
三角関数値そのものではない点が,不便だと感じます。
2乗の値が1つに決まっても,それが $0$ でない限り,
もとの値は1つに決まらないのですから。
この公式を使う問題は,それほど頻出ではない
文系の高校生の学習範囲(数学Ⅲ以外)で
この公式が活躍するのは,
この公式自体の理解を問う問題を
解く時くらいだと思います。
公式自体の不便さもあって,
問題を解く過程でこの公式を使いたくなる場面は
それほど多くない印象です。
ただ,数学Ⅲの【積分】を学習する場合は,
この公式(に近いもの)が使われる問題が
基本問題として出てくるので注意が必要です。
とは言え,その問題に対しても,後述のように
2倍角の公式の変形で代用できるようになっておけば
大丈夫でしょう。
(その方針で不足を感じたら覚えてください。)
学習への影響 文系1 理系2
数学Ⅲを学習する予定がない人は,この公式が苦手でも,
他の単元の学習で大きな影響が出ることはないと思います。
大学入試で数学が必要であるなら,
それまでに苦手を克服しておけばOKです。
数学Ⅲを学習する場合は,
「有用性」の項で前述したように,
少し影響があります。
記憶補強の難しさ 評価1
三角関数の半角の公式は,
2倍角の公式から簡単に導けます。
半角の公式が思い出せないときは,
教科書等で確認する前に,
2倍角の公式から自力で導いてください。
導き方
$\cos 2\alpha$ に関する2倍角の公式は,3通りあります。
- $\cos 2\alpha=\cos^2\alpha-\sin^2\alpha$ …… ③
- $\cos 2\alpha=2\cos^2\alpha-1$ …… ④
- $\cos 2\alpha=1-2\sin^2\alpha$ …… ⑤
この中で,$\sin^2\alpha$ と $\cos^2\alpha$ の両方が出てくる③は使いません。
$\cos^2\alpha$ だけが出てくる④と,$\sin^2\alpha$ だけが出てくる⑤を使います。
①の導き方
$\sin^2\dfrac{\alpha}{2}=\dfrac{1-\cos\alpha}{2}$ …… ①
①には「 $\sin^2$ 」が含まれるので,⑤を使って導きます。
⑤の両辺から $1$ を引くと,
$\cos 2\alpha-1=-2\sin^2\alpha$
両辺を $-2$ で割って両辺を入れかえると,
$\sin^2\alpha=\dfrac{1-\cos 2\alpha}{2}$ …… ⑥
この式の $\alpha$ を $\dfrac{\alpha}{2}$ で置き換えると,①になります。
②の導き方
$\cos^2\dfrac{\alpha}{2}=\dfrac{1+\cos\alpha}{2}$ …… ②
②には「 $\cos^2$ 」が含まれるので,④を使って導きます。
④の両辺に $1$ を加えると,
$\cos 2\alpha+1=2\cos^2\alpha$
両辺を $2$ で割って両辺を入れかえると,
$\cos^2\alpha=\dfrac{1+\cos 2\alpha}{2}$ …… ⑦
この式の $\alpha$ を $\dfrac{\alpha}{2}$ で置き換えると,②になります。
わざわざ半角の形にする必要はない
⑥や⑦の $\alpha$ を $\dfrac{\alpha}{2}$ で置き換えると①や②になると書きましたが,
その操作が必要になることはほとんどないと思います。
つまり,①や②の形まで変形せず,
⑥や⑦の形で使ってしまって構わないということです。
利用例
半角の公式の適用例としては,
例えば $\sin 22.5^\circ$ や $\cos 22.5^\circ$ の値を
求めるような場合が挙げられます。
①や②に $\alpha=45^\circ$ を代入すれば,
$\cos 45^\circ$ の値は $\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ と分かっているので,
$\sin^2 22.5^\circ$ や $\cos^2 22.5^\circ$ の値が求められるわけです。
しかしそれは,⑥や⑦に $\alpha=22.5^\circ$ を代入しても,
同じ結論が得られますよね。
そのような理由から,
①や②でできる議論が⑥や⑦でできないということは,
考えにくいのです。
2倍角の公式(④や⑤)にいきなり
$\alpha=22.5^\circ$ を代入しても解けます。
なお,数学Ⅲの【積分】の単元では,
式の中の「 $\sin^2$ 」や「 $\cos^2$ 」の形を
式変形により解消したいことがあるのですが,
そこでも,①や②より,⑥や⑦の方が
使いやすいことが多いと思います。
二者択一で迷ったら
これらの公式は,①と②であれ,⑥と⑦であれ,
右辺の形がよく似ていますよね。
⑥と⑦を並べてみましょう。
$\sin^2\alpha=\textcolor{#dd4411}{\dfrac{1-\cos 2\alpha}{2}}$ $\cos^2\alpha= \textcolor{#dd4411}{\dfrac{1+\cos 2\alpha}{2}}$
異なる点といえば,間の「+」と「-」だけです。
この公式を思い出そうとする時に,
どっちがどっちだったか,迷いそうだと思いません?
筆者はまさにそうです。
久しぶりにこの公式を使おうとしたら,
公式の形は覚えていても,どっちがどっちだったかは
大体自信がなくなっています。
そんな時は, 前述の方法で一から導いてもよいですが,
次のように判断する手もあります。
判断方法
この判断方法は,導き方を逆にたどり,
正しい2倍角の公式が現れるかどうかを見るものです。
慣れれば,頭の中だけで素早く判断できるようになります。
最初に,自信がなくてもいいので,
等式を書いてみます。
記憶違いをしていて,次の等式を書いたとしましょう。
$\sin^2\alpha=\dfrac{1\textcolor{#f00}{+}\cos 2\alpha}{2}$ (※誤りです!)
ここからスタートして,2倍角の公式に戻してみます。
両辺を $2$ 倍すると,
$2\sin^2\alpha=1+\cos 2\alpha$
両辺から $1$ を引いて,両辺を入れかえると,
$\cos 2\alpha=2\sin^2\alpha-1$
正しい2倍角の公式になりませんでした。
ということで,最初に書いた等式の「$+$」は
「$-$」とすべきであり,
次の式が正しいと判断できるわけです。
$\sin^2\alpha=\dfrac{1\textcolor{#f00}{-}\cos 2\alpha}{2}$
まとめ
三角関数の半角の公式については,
次のような認識(イメージ)を持っておくと
よいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。