この記事では,三角関数の「2倍角の公式($\tan$)」を解剖し,
覚え方や思い出し方などについて考えていきます。
「2倍角の公式($\tan$)」の概要
$\tan 2\alpha=\dfrac{2\tan\alpha}{1-\tan^2\alpha}$ …… ①
公式の意味・使い道
$\alpha$ の三角関数値である $\tan\alpha$ から,
$2\alpha$ の三角関数値である $\tan 2\alpha$ を
求めるための公式です。
学習事項としての評定
総合評価
有用性
学習への影響
記憶補強の難しさ
丸暗記の必要性
分析詳細
有用性 評価2
高校数学の範囲内では,
すごくよく使われる公式という印象はありません。
$\sin 2\alpha$ や $\cos 2\alpha$ の2倍角の公式は,
様々な問題を解く時に出てきますが,
$\tan 2\alpha$ の2倍角の公式は,
その公式自体が主役になる問題でもない限り,
あまり見かけない気がします。
学習への影響度 評価1.5
高校数学の範囲で,この公式を使って説明される部分は
特に思いつきません。
この公式が苦手でも,今後の数学の学習に
大きな悪影響を及ぼす心配はないと思われます。
数学の学習にじっくり時間をかけられない状況なら,
この公式の習得・習熟を
一時的に後回しにしても大丈夫だと思います。
記憶補強の難しさ 評価1.5
この公式は,他の公式から簡単に導けます。
導き方は2通り考えられます。
$\boldsymbol{\sin,\;\cos}$ の2倍角の公式から導く方法
1つ目は,$\sin,\ \cos$ の2倍角の公式を使う方法です。
\begin{eqnarray*}
\sin 2\alpha=2\sin\alpha\cos\alpha\ \cdots\ \text{②}
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
\cos 2\alpha&=&\cos^2\alpha-\sin^2\alpha&\ &\cdots\ \text{③}\\[0.4em]
&=&2\cos^2\alpha-1&\ &\cdots\ \text{④}\\[0.4em]
&=&1-2\sin^2\alpha&\ &\cdots\ \text{⑤}
\end{eqnarray*}
ここでのポイントは,$\cos 2\alpha$ について,
$\sin \alpha$ と $\cos \alpha$ が両方出てくる③を使うことです。
等式②,③より,
\begin{eqnarray*}
\tan 2\alpha&=&\dfrac{\sin 2\alpha}{\cos 2\alpha}\\[0.6em]
&=&\dfrac{2\sin\alpha\cos\alpha}{\cos^2\alpha-\sin^2\alpha}
\end{eqnarray*}
ここで,分子と分母を $\cos^2\alpha$ で割ると,
\begin{eqnarray*}
\tan 2\alpha&=&\dfrac{2\cdot\cfrac{\sin\alpha}{\cos\alpha}}{1-\cfrac{\sin^2\alpha}{\cos^2\alpha}}\\[0.4em]
&=&\dfrac{2\tan\alpha}{1-\tan^2\alpha}
\end{eqnarray*}
慣れれば,頭の中だけでこの式変形を行い,
公式を素早く思い出すこともできるようになると思います。
$\tan$ の加法定理の導き方とほぼ同じ
この式変形は,$\tan$ の加法定理を $\sin,\ \cos$ の加法定理から
導くときの式変形と同じ考え方です。
似たような式変形で複数の公式を思い出せるのですから,
お得な方法だと思うのですがいかがでしょうか。
$\boldsymbol\tan$ の加法定理から導く方法
$\tan$ の加法定理を覚えている人なら,
もっと簡単に導くことができます。
$\tan(\alpha+\beta)=\dfrac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}$ …… ⑥
$\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}$ …… ⑦
⑥を完全に覚えていれば,$\beta$ に $\alpha$ を代入するだけで
欲しい公式(①)が出てきますから。
しかし,⑥を暗記して①を導くという方針は,
あまりおすすめではありません。
$\tan$ の加法定理も,
この記事で扱っている $\tan$ の2倍角の公式と同様,
さほど使用頻度が高くなく,
丸暗記する必要性を感じない公式だからです。
それよりは,覚える必要性の高い
$\sin,\ \cos$ の2倍角の公式から導く方法の方が,
理に適っているのではないかと思います。
丸暗記の必要性(総合評価) 評価1.5
2倍角の公式($\tan$)は,
それほど複雑な公式ではないので,
覚えられる人は覚えてもよいと思います。
しかし,記憶が薄れてきた時の取り戻し方は
しっかり確保しておきたいところです。
そもそも,この公式は,
問題を解くにしても,教科書を読み進めるにしても,
使用頻度はあまり高くありません。
それも含めて判断すると,
必要になった時に導いて使えれば十分な公式だと思います。
まとめ:『2倍角の公式($\boldsymbol{\tan}$)』の特徴
高校数学Ⅱで学ぶ【三角関数】の
「2倍角の公式($\tan$)」については,
次のようなイメージを持っておくとよいでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。