【暗記事項の評定】高校数学Ⅱ|三角関数|2倍角の公式($\,\sin 2\alpha, \;\cos 2\alpha\,$)

この記事では,三角関数の「2倍角の公式($\,\sin,\;\cos\,$)」を解剖し,
覚え方や思い出し方などについて考えていきます。

「2倍角の公式($\,\sin,\;\cos\,$)」の概要

2倍角の公式($\,\sin 2\alpha,\;\cos 2\alpha\,$)

\begin{eqnarray*}
\sin 2\alpha=2\sin\alpha\cos\alpha\ \cdots\ \text{①}
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
\cos 2\alpha&=&\cos^2\alpha-\sin^2\alpha&\ &\cdots\ \text{②}\\[0.4em]
&=&2\cos^2\alpha-1&\ &\cdots\ \text{③}\\[0.4em]
&=&1-2\sin^2\alpha&\ &\cdots\ \text{④}
\end{eqnarray*}

公式の意味・使い道

$\alpha$ の三角関数値である $\sin\alpha,\ \cos\alpha$ から,
$2\alpha$ の三角関数値である $\sin 2\alpha,\ \cos 2\alpha$ を
求めるための公式です。

角が $2$ 倍だから三角関数値も $2$ 倍といった
単純明快な関係ではないものの,
それほど複雑でない式で値の関係が表せることが分かります。

学習事項としての評定

総合評価

ℹ️️
有用性

文系 ★★★★★
理系 ★★★★★

ℹ️️
学習への影響

文系 ★★★★
理系 ★★★★★

ℹ️️
記憶補強の難しさ

★★☆☆☆

ℹ️️
丸暗記の必要性

文系 ★★★★
理系 ★★★★★
「総合評価」の見かた

各項目,星0.5個きざみで,
★☆☆☆☆(星1個)から ★★★★★(星5個)までの
9段階です。

全体として,星の数が多いものほど,
覚える価値が高いということになります。

高校数学の学習事項については,
文系と理系に分けて評価しています。

理系は数学ⅢCまでの学習,
文系は数学Ⅲを除いた範囲の学習を想定しています。

  • 文系の学習範囲は数学Cを含むことに注意!

有用性 

主に,教科書・参考書の練習問題や,
高校入試や大学入試の数学で,
この記事の学習事項が利用されるひんを評価する項目です。

  • 他の公式や考え方で簡単に代用できるものは,
    丸暗記する必要性は低いと言えます。
    そのため,代用が難しいと考えられるものは,
    星の数を多くしています。

学習への影響 

この記事の学習事項を
スムーズに利用できるようにならないまま
数学の学習を続けた場合,
どの程度の悪影響が出るかを評価する項目です。

「有用性」との相違点

本項目「学習への影響」は,
前出の「有用性」と意味が重複しますが,
次のような違いがあります。

  • 「有用性」が高い学習事項が苦手なままだと,
    各単元で,解けない問題が多く発生する。
  • 「学習への影響」が高い学習事項が苦手なままだと,
    各単元で,理解できない基礎事項が増える。

理解できない基礎事項が増えれば,
解けない問題も多くなりますので,
「学習への影響」が高いのに
「有用性」が低いというケースは
あまり出てこないと思います。

逆に,応用問題でやたらと好まれるけれども,
他単元の理論の前提知識にならず,
他の定理や公式を導くのに
使われることもないような学習事項は,
「有用性」は高いけれども
「学習への影響」は低いということになります。

本項目「学習への影響」は,

  • 教科書にっていることを
    すぐに全部理解するのは難しそうだと感じる。
  • 学校の授業から大きく遅れた生徒が
    学校の授業に追いつくために
    既習事項を復習したい。

といった場面で,
理解しにくければ一時的に省略してもよい学習事項と,
理解しにくくてもねばるべき学習事項を見分けるのに
利用できると思います。

  • 星4個以上の学習事項は,
    理解度が低いまま突き進むと,
    数学の学習が続けられなくなるおそれがある
    (と筆者が判断している)と考えてください。
  • 星2個以下の学習事項は,
    今後学ぶ数学を理解するのに不可欠ではないと
    筆者が判断しているものです。
    その事項の習得に苦戦するようなら,
    ひとまず苦手なままで放置して他の学習を優先し,
    入試などの重要なタイミングまでに克服こくふくするといった方針を
    採用しやすい学習事項になります。⚠️

記憶補強の難しさ 

ある知識について記憶が薄れた場合に,
他の知識を利用して薄れた記憶を補強できるなら,
完全な記憶を維持しつづける必要はありません。
それが難しいと思われる学習事項に,星を多くつけています。

  • 星2個以下の学習事項は,
    比較的簡単に記憶を補強できるものです。
    その方法をしっかり覚えましょう。
    そして,公式自体の記憶が薄れた場合でも,
    すぐに教科書で確認するようなことはせず,
    他の公式などから記憶を再構築するようにしてください。⚠️
  • 試験の時間中に公式を忘れた場合,
    教科書で確認するのは反則ですが,
    自力で導きなおすのは完全に正当です。
    多くの公式についてそれが素早くできるようになると,
    試験でも有利であると言えます。
  • この評価項目は,文系と理系で共通です。

丸暗記の必要性 

この学習事項を丸暗記する必要があるかどうかの総合評価です。

おことわり 

この評価は,あくまで筆者個人の感覚によるものです。

感覚は人それぞれなので,
読者が違和感を覚える評価があるかもしれません。

その場合は,記事本文をよく読んで判断してください。

それでも違和感が解消されない場合は,
学校や塾の先生など,よく知っている人に
意見を求めてみてください。

分析詳細

有用性 評価5

数学Ⅱの【三角関数】の単元では,
問題を解く際にも,他の公式を導く際にも,
非常によく使われます。

他単元での利用も幅広く,
数学Ⅲの【極限】【微分】【積分】や,
数学Cの【複素数平面】【極座標】【2次曲線】ℹ️で,
この公式はよく利用されます。ℹ️⚠️

問題を解く上でも,教科書を読み進める上でも,
欠かせない公式です。

学習への影響 文系4.5 理系5

「有用性」の項目で説明した通り,
数学Ⅱの【三角関数】の単元ではもちろんのこと,
数学Ⅲや数学Cの各単元でも
しばしば利用される公式です。

特に,数学Ⅲの【微分】【積分】では,
この公式を使いこなせないと,
解ける問題が何割か減るくらいの影響が出ると思います。

数学Ⅱを学ぶ段階で完全にマスターしたい公式です。

記憶補強の難しさ 評価2

この2倍角の公式は,
加法定理と記憶を補完しあえる関係です。

【三角関数】を学び始めた段階で,
加法定理を覚えるのに苦労する人は多いでしょう。

三角関数の加法定理($\sin,\;\cos$)

\begin{eqnarray*}
\sin(\alpha+\beta)&=&\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta&\ &\cdots\ \text{⑤}\\[0.4em]
\sin(\alpha-\beta)&=&\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta&\ &\cdots\ \text{⑥}\\[0.4em]
\cos(\alpha+\beta)&=&\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta&\ &\cdots\ \text{⑦}\\[0.4em]
\cos(\alpha-\beta)&=&\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta&\ &\cdots\ \text{⑧}
\end{eqnarray*}

加法定理も2倍角の公式も,
丸暗記した方が良い公式であることは
間違いありません。

しかし,片方の記憶が薄れてきた時に,
その記憶をもう片方の記憶から取り戻せるというのは,
大きな安心材料になるはずです。

公式の導き方:[加法定理]→[2倍角の公式]

加法定理の記憶がはっきりしていれば,
2倍角の公式を導くのは簡単です。

特に,$\sin 2\alpha=2\sin\alpha\cos\alpha$ …… ① は簡単です。

等式⑤の $\beta$ に $\alpha$ を代入するだけですから。ℹ️️

$\cos 2\alpha=\cos^2\alpha-\sin^2\alpha$ …… ② も,
同様に簡単です。

等式⑦の $\beta$ に $\alpha$ を代入すれば②になります。

③と④はもうひとかかる

注意するべき点としては,
$\cos 2\alpha=2\cos^2\alpha-1$ …… ③ と
$\cos 2\alpha=1-2\sin^2\alpha$ …… ④ は,
加法定理だけでは出てこないことが挙げられます。

これらを導くには,加法定理から②を導いた上で,
$\sin^2\alpha=1-\cos^2\alpha$ や $\cos^2\alpha=1-\sin^2\alpha$ を
代入するのが最短の方法になると思います。

ですので,$\cos 2\alpha$ の公式は,$\sin 2\alpha$ に比べて,
忘れ方によっては思い出すのに時間がかかるという意識を
持っておくと良いかもしれません。


とは言え,加法定理から2倍角の公式を導くのは
さほど難しくありません。

学習時に2倍角の公式を忘れてしまったら,
教科書等で確認する前に,
ぜひ,加法定理から導き直すようにしてください。

記憶確認の方法:[2倍角の公式]→[加法定理]

逆に,2倍角の公式をしっかり覚えている場合,
加法定理の記憶に自信がなくなっても,
その記憶を確認する方法があります。

加法定理の記憶に自信がなくなると言っても,
真剣に丸暗記を試みたのであれば,
影も形も出てこないことはないでしょう。

少なくとも,加法定理の4つの等式⑤~⑧について,
次のようなイメージは残っていると思います。

  • いずれの等式の右辺でも,
    $\sin$ と $\cos$ が2回ずつ出てくる。
  • いずれの等式の右辺でも,
    $\alpha$ と $\beta$ が交互に2回ずつ出てくる。
  • ⑤と⑥の右辺の違いは,
    真ん中の記号がプラスかマイナスかだけである。
    ⑦と⑧についても同様。

さて,例えば,⑦や⑧の右辺の真ん中の記号が,
$+$ だったか $-$ だったかと,
自信を持てなくなったとします。

つまり,記憶が,

 $\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta\;\mathblankdot\;\sin\alpha\sin\beta$

となっていて,$\mathblankdot$ に入る加法・減法の記号で
迷っている状態です。ℹ️️

こんな時は,記憶の式の $\beta$ に $\alpha$ を代入して,
2倍角の公式を作ってみるとよいです。

 $\cos(\alpha+\alpha)=\cos\alpha\cos\alpha\;\mathblankdot\;\sin\alpha\sin\alpha$

つまり,
 $\cos 2\alpha=\cos^2\alpha\;\mathblankdot\;\sin^2\alpha$

ここで,2倍角の公式の記憶がはっきりしていれば,
$\mathblankdot$ に入る記号は $-$ であると判断できるわけです。ℹ️️

この方法は,加法定理の記憶がもう少しくずれていても
通用すると思います。

加法定理の記憶に自信がなくなったら,
教科書等で確認したりする前に,
ぜひ試してみてください。

ここで示した記憶確認の方法は,一例です。
もっと簡単で便利な確認方法があるかもしれません。

加法定理の暗記に不安がある人は,
色々な工夫を試してみてください。ℹ️️

丸暗記の必要性(総合評価) 文系4.5 理系5

2倍角の公式($\sin,\;\cos$)は,
使用頻度が極めて高いので,
丸暗記するべき公式だと思います。

しかし,加法定理から比較的簡単に導けるので,
記憶が薄れた時の対処法はある
考えてよいでしょう。

ただ,前述の通り,
$\cos 2\alpha=2\cos^2\alpha-1$ …… ③ と
$\cos 2\alpha=1-2\sin^2\alpha$ …… ④ は,
加法定理だけでは出てこないことに注意が必要です。

加法定理を出発点として③や④を導くには,
$\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1$ を併用することになるので,
③や④を忘れた場合,導き直すのに
少し時間がかかると思います。

使用頻度が非常に高いことを考えると,
できるだけ記憶を保持したい公式です。

まとめ:『2倍角の公式($\boldsymbol{\,\sin,\;\cos\,}$)』の特徴

高校数学Ⅱで学ぶ【三角関数】の「2倍角の公式」については,
次のようなイメージを持っておくとよいでしょう。

2倍角の公式($\sin,\;\cos$)のイメージ

  • 使用頻度は極めて高い。
    丸暗記した上で,できるだけ記憶を保持したい公式。
  • 加法定理から比較的簡単に導けるので,
    記憶が薄れた時の対処法はある。
  • 数学Ⅲや数学Cでもよく利用される公式なので,
    数学Ⅱを学んでいる段階で
    この公式は完全にマスターしておきたい。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。

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