記事分類【暗記事項の評定】

この記事分類について

【暗記事項の評定】は,学習者向けの記事分類です。

この分類の記事では,主に,
高校までに学ぶ数学で出てくる公式を
効率良く覚えて使いこなすための,
様々な分析やアドバイスをせていきたいと思っています。

公式分析の着眼点

記事では,それぞれの公式について,
次のような点に注目して分析を行っています。

  • 公式についての記憶が薄れた時に,
    記憶を取り戻す方法があるか。
  • 複雑な公式を丸暗記せずに済ませる方法があるか。
  • その公式を使いこなせないと,
    その後の数学の学習に深刻な影響が出るか。
なぜ,このような情報が必要か(学習者向け)

どうしても丸暗記が必要な公式は少数派 

中学数学の後半になると,
覚えるべき公式が増えてきますね。

高校数学に入ると,覚える数もさらに増えますが,
それ以上に,非常に複雑な公式も出てきて,
学習者を悩ませます。

公式の暗記に苦労している人も多いでしょう。

孤立した記憶は弱い 

数学に限った話ではありませんが,
孤立した記憶は弱いです。

人の記憶は薄れるものです。

そして,孤立した記憶は,
記憶が薄れてきた時に取り戻す方法がありません。

日本史の例を挙げてみます。

かの有名な武将である徳川家康が死去した年は,
1616年とされています。

これだけを覚えていると,
「1616年」という記憶が薄れてきたら,
取り戻す方法がありません。

しかし,「大坂夏の陣」が
1615年に起きたことを知っている人ならば,
家康の没年の覚えやすさもだいぶ違ってきます。

大坂夏の陣とは,徳川家が
ライバルだった豊臣家を滅ぼした戦いですね。

つまり,家康は,大坂夏の陣で,
徳川家の天下が盤石になったのを見届けてから,
翌年には死去してしまったことになります。

このことを知っていればどうでしょう?
徳川家康の没年について,
一気に忘れにくくなったのではないでしょうか。

「大坂夏の陣は1615年」の記憶が薄れても,
「徳川家康の没年は1616年」の記憶が薄れても,
片方の記憶が残っていれば,
もう片方も簡単に取り戻せます。

さらに,「大坂冬の陣は1614年」も知っている人なら,
3つのうち1つを覚えていれば,
3つ全部を思い出せるでしょう。

このように,関連知識を増やせば増やすほど,
知識は孤立しなくなり,
記憶が薄れても取り戻せるようになります。

ある分野についてものすごく博識な人を見ると,
よくそんなにたくさん覚えていられるな」という
感想を抱きがちだと思うのですが,
それはちょっと違うんですね。

たくさん覚えているから覚えていられるのです。

数学の公式の多くは,記憶が薄れても取り戻す方法がある 

幸い,数学の公式は,
孤立した記憶にしないための工夫が
できることが多いです。

例えば,公式を覚える時,公式の導き方も一緒に覚えれば,
公式の記憶自体が薄れても,その場で導き直すことで,
記憶を再構築することができます。

公式は,導き方が簡単であるなら,
導き方ごと覚えなければ損
なのです。

公式を導き方ごと覚える例 

中3数学の例ですが,次のような展開公式が出てきます。

 $(x-a)^2=x^2-2ax+a^2$

これを学ぶ時期の中学生は,公式の暗記に慣れていないため,
これを覚えるのに少し苦労するかもしれません。

この公式を忘れて教科書で確認するといった行動は,
多くの人が通る道でしょう。

しかし,この公式を忘れた時は,
できれば自力で導いてほしいのです。ℹ️️

導き方は簡単です。
$(x-a)^2$ を $(x-a)(x-a)$ と見て展開するだけです。ℹ️️

\begin{eqnarray*}
(x-a)(x-a)&=&x^2-xa-ax+a^2\\[0.4em]
&=&x^2-2ax+a^2
\end{eqnarray*}

このような導き直しは,
試験中に行っても問題ないという利点も大きいですが,
むしろ,学習段階でしっかり意識してほしいことです。

学習時にこのような導き直しを何度かくり返すと,
導き直しにほとんど時間がかからなくなりますし,ℹ️️
思い出す材料が増えるため,極めて忘れにくくなります。

つまり,極めて忘れにくく,
忘れてもあっという間に再構築できる,
最強の記憶になるわけです。⚠️

覚えなくても使える公式さえある 

公式は暗記して使うものだと思っている人は多いでしょう。

その考えは基本的に間違っていませんが,
全ての公式がそうだというわけではありません。

非常に複雑な公式でありながら,
他の公式から簡単に導けるため,
丸暗記しなくても使いこなせる
そんな公式さえあるのです。ℹ️️

それを知らず,複雑な公式を丸暗記するのに
時間や気力を使うのは,非常にもったいないです。

そこをしっかり効率化して,
他の学習のために時間や気力を
残せるようにしたいものです。

なぜ,このような情報が必要か(教育関係者向け)

丸暗記するべき事項かどうかの判断材料を示すべき 

教科書では,すぐに覚えるべきものとそうでないものが区別されていない

中学生や高校生は,
数学の学習ばかりしていられるわけではありません。

数学の学習に割ける時間が限られる中で,
学校の授業についていく必要があります。

しかし,数学の教科書には,
そのような現状に対する配慮が感じられません。

この公式は,覚えにくくても今すぐに覚えて
使えるようになる必要があるとか,
この公式は,覚えにくければ今は覚えず,
他の学習事項を優先してもよいといった,
重要度による区別がつかないのです。

そのような情報は,理解が大幅に遅れた生徒が,
できる限り早く学校の数学の授業に追いつきたいので,
各単元について最小限の復習をしていきたいといった場合に,特に重要になります。

ちまた数多あまた存在する数学の参考書の大半も,
筆者の知る限り,似たようなものです。

これは,学習者にとって,
極めて不親切な状況だと思います。

中学生,高校生を中心とする学習者は,
それが分からないと,力の入れどころを誤って,
数学の学習を続けるために重要な部分の理解が
不十分になってしまうおそれがあります。

教科書では,簡単に導ける公式とそうでない公式が見分けにくい

数学の教科書は,その学習段階で導ける公式については
導き方までせているので,
丸暗記するか導いて使うかといった判断も,
可能といえば可能です。

しかし,主な学習者である中高生の多くは,
そこまで考えず丸暗記に走るでしょう。

これはすごくもったいないことだと思います。

この公式は導き方が簡単なので,
忘れたらこの方法で導いて思い出そう

のような助言を,
それが実行しやすい公式だけでもよいので,
積極的に明示するとよいのではないかと思います。

この記事分類の目的 

そこで,この記事分類では,
できるだけ多くの公式類について,
重要性や導き方,思い出し方などに関する
分析やアドバイスを載せていきたいと考えています。

公式類の中には,残念ながら,
忘れた場合に他の公式などから導いたり,
使わずに済ませたりするのが難しく,
丸暗記がどうしても必要になると
考えられるものもあります。

2次方程式の解の公式(中3数学)や,
三角関数の加法定理(高校数学Ⅱ)などが
該当すると思います。

2次方程式の解の公式は,
方程式を平方完成で解けば回避できますが,
2次の係数が$\;1\;$でない2次式の平方完成は
中学3年生にとっては難しいでしょう。

それらの公式は忘れてしまったらまずいので,
念入りに覚えなければならないわけですが,
そのような公式は少数派です。

多くの公式は,記憶が薄れてしまっても,
打つ手があるものばかりです。

であるならば,公式の覚え方を学習者任せにするのではなく,
記憶が薄れた時の対処法を
積極的に示していくべきではないでしょうか。

この記事分類は,数学の教育関係者に向けて,
上記のことを提案するとともに,
その効果について考えていただくためのものでもあります。

評定一覧

現在は,ごく一部の分野について,
ごく少数のサンプルしか置いていません。ℹ️️ℹ️️

今後,増やしていく予定です。

下記の表の「評定」は,
丸暗記する必要性」を評価した指標です。
(1が最低,5が最高)

評定が低くなっている事項の中には,
重要だけど完璧に覚えなくても使える
というものが含まれることに注意してください。

つまり,ある事項の評定が低いことは,
その事項の重要性も低いことを
全く意味しませんので,
早合点することのないようお願いします。ℹ️

この記事分類で示す学習事項への評価は,
管理人が自身の適当な感覚で付けたものですので,
参考程度でお願いします。⚠️

不安を感じる場合は,学校や塾の先生など,
よく知っている人に相談してもらえればと思います。

中3数学|幾何(図形分野)

関連
記事
項目名評定寸評
三平方の定理5丸暗記が必要。
証明は無理に覚えなくてもよい。
特別な直角三角形の
辺の長さの比ℹ️️
5丸暗記が必要。⚠️
記憶に自信がなくなった場合は,
正方形や正三角形を2等分してできる
直角三角形であることを利用して,
三平方の定理から導ける。

数学Ⅰ|三角比

関連
記事
項目名評定寸評
$30^\circ,\ 45^\circ,\ 90^\circ$ などの
三角比の値
1丸暗記するものではない。⚠️
値が必要になるたびに,
直角三角形や座標平面上の半円を
思い浮かべて割り出すのが吉。
$90^\circ-\theta$,$180^\circ-\theta$ などの
三角比
2種類が多く,全部覚えるのは大変。
公式として覚えるのではなく,
座標平面上の半円を思い浮かべて
割り出すのが吉。
$\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$5丸暗記が必要。
$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$5丸暗記が必要。
$1+\tan^2\theta=\dfrac{1}{\cos^2\theta}$3丸暗記した方が良いかもしれないが,
それ以上に,導き方を覚えておくことが大事
$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ の両辺を
$\cos^2\theta$ で割ることで導ける。
それを知っていれば,
常時鮮明に記憶を保つ必要はない。
正弦定理4丸暗記した方が良いと思う。
記憶に自信がなくなった場合は,
三角形とその外接円の図をかき,
円周角の定理などを利用すれば導ける。ℹ️️
余弦定理
($\,a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$ など)
4.5丸暗記した方が良い。ℹ️️
余弦定理
$\left(\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}\right.$ など$\left.\vphantom{\dfrac{1}{2}}\right)$
2.5「$a^2=$~」の形の余弦定理を覚えていれば,
こちらは簡単に導ける。
余力があるなら覚えた方が良いと思うが,
導いて使えれば十分。
三角形の面積
$\left(S=\dfrac{1}{2}\,b\,c\sin A\right.$ など $\left.\vphantom{\dfrac{1}{2}}\right)$
3.5面積を求める問題を素早く解きたいなら,
丸暗記した方が良い。ℹ️️
ただ,この公式を忘れた場合でも,
三角形の頂点から向かい合う辺に垂線をひき,
その垂線の長さを三角形の高さと見る方法が
身についていれば,多くの問題に対処できるはず。
ヘロンの公式⚠️1.5忘れた場合に導くのは現実的でないので,
使いたいなら覚えるしかなさそう。
ただ,この公式を使わないと解けない問題は
少ないと思われる。
数学が苦手な人が無理に覚えるものではない。

数学Ⅱ|三角関数

関連
記事
項目名評定寸評
$\dfrac{\pi}{2}-\alpha$,$\pi-\alpha$ などの
三角関数値
1.5種類が多く,全部覚えるのは大変。
公式として覚えるのではなく,
単位円を思い浮かべて割り出すのが吉。⚠️
三角関数の加法定理
($\sin,\ \cos$)
5丸暗記が必要。
2倍角の公式
($\sin,\ \cos$)
文系 4.5
理系 5
忘れても加法定理などから
比較的簡単に導ける。
ただ,さほど複雑な公式ではなく,
かつ使用頻度が非常に高いので
丸暗記を強くおすすめする。
三角関数の加法定理
($\tan$)
1.5加法定理($\sin,\ \cos$)から
導いて使えれば十分。
2倍角の公式
($\tan$)
1.52倍角の公式($\sin,\ \cos$)から
導いて使えれば十分。
半角の公式
($\sin,\ \cos$)
1.52倍角の公式($\sin,\ \cos$)から
左記の公式と同値な等式を
導いて使えれば十分。
半角の公式
($\tan$)
1半角の公式($\sin,\ \cos$)を知っていれば
直ちに導ける。
使用頻度は低く,習得の優先度も低い。
3倍角の公式
($\sin,\ \cos$)
3導く手順が長いので,
使うなら覚えた方が良さそう。
数学が苦手な人は,
優先度を下げてもよいと思う。
積→和の変換公式
和→積の変換公式
1覚えて記憶を保持するのは大変すぎる。
加法定理($\sin,\ \cos$)から
左記の公式と実質的に同じ等式が
簡単に導ける。ℹ️️
それを使えば大抵たいていの問題に対処できるはず。
三角関数の合成1.5丸暗記はしにくいと思う。
合成の手順を身につけた方が良さそう。

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